自動運転技術で失業者のセーフティネットが崩れるかも、という話
タクシーの自動運転の検証実験が始まりましたよ、というニュースを読みました。
今でも自動車の運転支援システムというのは確立されていて、車と車の間を計算して衝突を回避したり、ハンドルの操作を検知して車線を外れたりしないように制御するといった技術が生まれ、実際の走行車両に組み込まれている実績があります。
そのノウハウを高めていき、将来的には「無人」で人やものを目的地まで運ぶようにできるようにするのが自動運転のゴールであり、その未来は遠い先ではないとまで言われるようになっています。非常に楽しみですね。
自動運転技術が発達することで、以下のようなメリットが生まれると思います。
- 交通事故の減少
- 交通状態を予測することによる渋滞の減少
- 運転のできない高齢者の移動手段として活躍する
そして何よりも「輸送」を行うビジネスにおいて、人件費を大幅に削減できるという動きが出てくるのではないかと予測しています。
ものや人を運ぶ上で必要な設備や資源(例えば車やトラックを維持するコスト、ガソリン、輸送のためのネットワークの整備など)以上に、人が働くというコストが一番かかります。
そのコストがカットできる可能性があれば、輸送を主としたビジネスは大きく変化します。一度その仕組みを構築してしまえば、人が関わらなくても売り上げを伸ばすことができる。そんな未来も近いのかもしれません。
自動運転技術が発達することによって、こういった人たちの雇用が失われる可能性があるのでは?というのがタイトルの問いですね。
タクシー運転手は第一種の普通免許を持っていれば比較的なりやすい職業であり、なんらかの理由で失業したり、転職をする際に選択しやすい背景からか、日本の失業者のセーフティネットと呼ばれている節があります。
ちょっと調べたのですが、平成25年の資料で8160万人が普通車の第一種の普通免許を持っているというデータがありました。
警察庁交通局運転免許課の「運転免許統計 平成25年版」 (PDF)
https://www.npa.go.jp/toukei/menkyo/pdf/h25_main.pdf
総務省統計局によれば日本の人口が平成25年時点で1億2500万人ほどおり、年少人口(0歳〜14歳)が1600万人ほど、そして普通免許取得者が8160万人ということなので、だいたい8割ぐらいの人は車を運転する資格を持っていることになります。(15歳のデータも含めるべきだけど、面倒なので割愛)
統計局ホームページ/人口推計/人口推計(平成25年10月1日現在)‐全国:年齢(各歳),男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級),男女別人口‐
比較的専門性が低く、取得率が高い普通免許を生かすことができるので、失業者のセーフティネットと言われている現状があるんですね。
万が一失業しても、免許があればとりあえず食っていくことはできる。そんな話が近い将来なくなってしまう可能性はあると思います。
最近運転ができない高齢者のためのタクシーサービスのニーズが高まってきているという話も聞くので、まだまだこの業界もすぐに再編されることはないと思いますが、いつか覚悟をしないといけない時期はやってくるのでしょうね。