めぐりめぐる。

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【落語】寒くなってきたし、「時そば」を聴こうよ、という話

外回りの営業マンはこの寒い時期が一番辛いです。コートとマフラーを付けていても風が強いと寒さに耐えられないし、お客様の事務所に早く着いてしまったら外で待たないといけないし、入室する前に上着を脱いで入らないとマナー違反になるわで大変です。今年はまだ名古屋も雪が降ったりすることはないですが、これから先2月に向けてぐっと冷え込むことを考えただけで、会社辞めたいです。布団から出たくない。

 

さて、まあこんな営業マンの心の癒やしになるのが、客先への移動中、駅の中にひっそりと佇む立ち食いそば屋さんね。寒い中駅の中で自動販売機を探していると、蕎麦つゆのいい香りがしてくるんだ...。ふらっと立ち寄り、中に入るとそばを茹でるお湯の湯気が立ち昇っていて、とてもあたたかい。眼鏡が急に曇ってしまうのをティッシュペーパーで拭き取りながら「そば一つ、かき揚げ付きで!」と注文する。大将が「あいよ!」と元気な声で返事をすると、予め準備がしてあったかき揚げを油に入れて、そばを茹で始める。辺りを見渡すと、クリスマスの雰囲気にちっとも馴染まなそうなくたびれたサラリーマンが一心不乱にそばを啜っている。そう、これよ。これがいいんだ。スマートフォンをいじりながら飯を食うやつもいない、すぐに出てきたそばをまっすぐ見つめ、食べる。飯と向き合う。この雰囲気がいいんだ。

 

そんなことを考えていると、注文したかき揚げトッピング付きそばがでてきた。色艶の悪いかき揚げ。いい油で揚げてねえんだろうなー。でもそれでいいんだよ。齧ってみると「かりっ」ではなく「ぐにゅっ」という感触だったが、まあいいんだよ。さくさくの天ぷらは立ち食いそばには合わねえんだ。たぶん。蕎麦つゆを飲んでみる。煮立っていて濃ゆい味だ。でも悪くない。冷えた身体にじっくりと染み渡るようだ。そばをズズッと啜ってみる。美味い。高級の麺ではないので柔らかく、すぐに汁を吸ってぶよぶよになりだが、身体に悪そうな蕎麦つゆを勢い良く吸い込むから良く絡むんだこれが。ズルズル。何杯でもいけそう。そばを一生懸命啜っていると蕎麦つゆとかき揚げが余ってしまったので、追加で卵を注文。つゆに溶かしてみる。つゆがまろやかになり、かき揚げの主張の強さが緩和される。何とも言えない一体感だ。どれだけでも飲めそうなスープに変身する。お椀を両手で持ち、一気に飲み干す。ああ、温まる。塩分が多いのか、途端に喉が乾くので、温かいお茶をもらい、ゆっくり飲む。店に入る前よりも、少しだけ幸せになって、僕はお会計を済まし店を出るのだ...。

 

...何の話だっけ。ああそうそう、時そばの話だね。話の枕が長くなってしまった。

 

落語にも四季があって、時そばというのは冬に演る話だ。登場人物は、蕎麦屋さんと男だけ。笑いの構成としては「賢い(詐欺をする)男と、その様子を見て真似ようとするが大失敗する男」の滑稽話だ。話の最初に出てくる賢い男は、蕎麦屋と巧みに話をして最終的に支払い代金をちょろまかしてしまう。その様子を見た別の男が、「あいつすごいな、俺も真似をしてやってみよう」とするのだけど、同じ状況を上手に作ることができなくて失敗し、値切るどころか払う金額が増えてしまうというお話。

 

落語にはこういう「あいつのやってること面白いなあ、俺もやってみよう!」と真似て失敗するというお約束のネタがいくつもある。こういった話が面白いと感じることの理由の一つに、今回の話でも「そばを安く食べたいから料金をちょろまかしている」男を見て、「料金をちょろまかしてみたいという好奇心だけでそばを喰いに行く」という男が登場してくるのが何とも滑稽で、面白い。間抜けなことになってしまう男と蕎麦屋の会話が後半とても盛り上がる話なので、是非ご覧ください。

 

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