抑制と情熱の間
アル中カラカラ、という言葉で話題になったおじさんがいるのをご存知だろうか。凄まじい濃さでハイボールを作り、恐ろしい量を笑っちゃうスピードで飲み干すのだ。
炭酸をウイスキーで割っていると言ったほうが正確そうな飲み物を楽しそうに飲みながら、汚い畳の上で肉や野菜を切り、何年も洗ってないように見える炊飯器で飯を作る。「おいしーかも!」というのが彼の口癖なのだが、一切抑制の効いていない、欲望のまま食いたいものを食い飲みたいものを飲んでいる姿を見ていると、なんだか幸せそうで羨ましく感じてしまう。
我慢するとか清潔に保つとか自分を大切にするとかそういった概念は存在していなくて、ある種の自傷行為にも見えるけど、抑圧されていないおじさんの一つ一つの行動を見ていると、そこには間違いなく人間としての幸せが確かにあるように思える。
利口的であることが必ずしも良いわけではなくて、本当は良くないと思いつつも己の声を聞いて羽目を外してみるのもいいかもしれないと思った。
ただ僕はもう長いこと自分の心の声を聞くことをしてこなかったので、アル中カラカラさんのように思いっきり何かしたい、行動したいと思えることがない。わからない。これはちょっと悲しいと思う。
ちょっとでも自分が意欲的になれていることを見つけてはメモを取り、知るしかない。壮大なリハビリをしているような気分だ。