母さん、産んでくれてありがとう

母さんへ。

いつも心配かけて申し訳ないと思ってる。社会に出てからの俺は本当に苦労の連続で、どうやって食っていけばいいかもわからずひたすらに奔走し、結果適応障害で病気になってはじめて自分の人生を得た。気がするんだ。なんとなくわかるだろ。

自分が発達障害であると知り、自分の本質を知り、つらい気持ちになった。古くからの友人はほとんどいなくなった。言葉がきつすぎる。自分でもわかっているんだが、止まらないんだ。それは、俺の本質がこうだからだよ。それは申し訳ないと思っている。

本当にあなたから産まれて幸せだと思っている。お金にも不自由したことがない。大学まで何不自由なくいかせてもらった。奨学金は借りたが、結局私が払うからと俺から支払い用紙を奪っていったあなたに頭があがるはずもない。典型的中流階級の家に産まれたと俺は自覚しているんだけど、その中でもかなり俺は幸せなほうじゃないかと思っている。本当に。

結婚資金まで出してもらったのに家庭がめちゃくちゃになってしまって悪かった。俺の努力が足りなかったのかもしれん。俺は頑張っていたつもりだったんだが、ある時歯車が狂い始め、坂を転がる石のように一気に状況は悪化した。ただ、今は随分と落ち着いている。

いつか恩返しがしたいと思っている。ただ、まだ療養は必要みたいだ。問題も山住みだ。一つ一つ解決していかないといけないと思う。問題の性質上、当人同士だけの話で済まないことが多く、引き続き迷惑をかけてしまう。それは申し訳ないと思っている。書いていて泣けてきたが、本当にそう思っているんだ。

出る股は選べない中で、俺はあなたに助けられている。以前、こんな風に産んでしまってごめんというようなニュアンスの言葉を俺にかけたが、それは間違っている。感謝しかない。

人間は産まれながらにして死を克服できず、老いていく一方で、悲しいことの方が多く、乗り越えるべき課題も多い。でも、最近やっと人生の楽しみ方がわかってきた気がするんだ。

だから、あらためて言わせてほしいんだけど、産んでくれてありがとう。

（ライティングタイムアタック : 涙で見えなかった）