NHKがきたので
「はい、にゅーとんですけど」
「NHK受信料の徴収にきました」
と男はいった。慣れてなさそうな、頼りなさそうな、辛そうな風貌だった。たぶん強風がきたらこいつは真っ先に飛ぶやつだな、と俺は即座に思った。
「今忙しいんだけど」
「忙しくても、聞いていただきたいんです」
「ほう、俺の忙しさよりも重要だと?俺の時間は高いよ?大丈夫?」
「え、ええ...」
たよりねえなあ、と思った。自信満々にきたら話ちゃんと聞いてあげるのに。
「テレビありますよね、そしてお客様は受信料を払われていないようなのです」
「ようなのです?テレビありますよね?なにその聞き方?」
と俺は言った。ちなみに俺の家にテレビはない。
「テレビないけど」
「テレビなくても、モニターとかワンセグとかあれば払ってください」
「テレビもスマホもないし車もないし何もないけど」
「そんなことあります?」
「俺はこの話をしてくるやつのほうが信じられないけど?」
と俺はいった。
「契約したっけ?」
「え?」
「契約は成立しているっけ?なんで払わないといけないの?」
「そう決まっているからです」
「契約してないのに?すごいなそれは。契約が成立していないのに、払う義務があるの?すごいな。俺営業職なんだけど、やり方教えてよ。お金払うわ。」
本当にすごくね?なんでなん?
「放送法とかで決まってるの?」
「え?」
「放送法をいますぐ読み上げてごらんよ」
「はあ」
「はあじゃないよ、190条ぐらいあるだろ。読んでないの?」
「はい」
あ、そう。つらまんなあ。
「とにかくね、契約が成立していて払わないならともかく、契約も成立していないのに何言ってんのって感じだから。あと忙しいから。さよなら」
そう言うと男は去って言った。次は時間単価7000円もらおうと思う。
(怒りのライティングタイムアタック : 3分32秒)