神様からたくさんもらいやがって
「神様から本当にたくさんのものをもらいやがって本当に君は羨ましいな」
と俺は女にいった。
「まあね、髪の毛はサラサラ、性格もいいし、低身長でかわいいから、女子にも男子にもモテる」
と女は言い放った。まあなんて余裕の表情なんでしょう。LINEのやりとりだったが、高みの見物のような雰囲気がびんびんと俺に伝わってきた。
人は生まれながらにして平等などとんでもなくて、本当に無慈悲だ。不公平だ。最初に着せられる服も違う、地位も、名誉も、金も、環境も、約束された未来も、全部全部違う。最初からガチャよ。もう自分がスーパーレアだったらいいのにと俺は思った。
ただ俺は、自分のことをレアぐらいだと思ってるけどね。お金に不自由したことないし、優しい親がいるし、少ないけど仲の良い友達はいるし。病気になったけど気づいたこともいっぱいあって、人生の楽しみ方も28歳になってやっとわかってきた。幸せよ。
そう思っていると、女はいった。
「ま、神様がくれなかったものもたくさんあるよ」
強烈な右ストレートが入ってきた。そう。そうなんだよな。くれないものもたくさんある。二度と手に入らないものもある。手に入れなくても、どんなに金を稼いでも、人に頼んでも、無理なものは無理。とくに幼少期の思い出とかそうなんちゃうかな。一生残るだろあんなん。
女は女なりに地獄を味わい、また同時に楽しい人生を送ってきた。
俺は俺なりの地獄があり、また新たな幸せをつかもうと頑張っている。
そうやって、俺たちも、みんなも、生きている。
(ライティングタイムアタック : 2分42秒)