全能感を捨てきれない
とある友人のライブが昨日あったので見に行ったんだけど、ハコの中でとんとんと肩を叩かれて、ああん何だよと思って振り返ったら会社の先輩がいた。ああ...仕事とリアルが繋がった瞬間だった。
どうせ誰にも会わないだろうと思ってTシャツに長さの合っていないジーパン(裾を折りたたんで履いてる)と、サンダルの格好を見られたのが猛烈に恥ずかしかった。何の法則か知らないけど、完全に油断したな、と僕は思った。
どうも数年つるんでいる友人と繋がりのあるバンドでボーカルをやっていたみたいで、驚いた。およそ6年。いつ交わってもおかしくなったが、会社の同僚になったことで急に謎の吸引力で引き寄せられたのだろうか。とても偶然とは思えなくて、「ああこれが必然ってやつか」と思った。
さらに驚いたことに、今勤めている会社の社長がやっているバンドとも交流があるらしく、来年に同じハコでライブをするらしい。ああもう勘弁して...と僕は思った。次々に紡がれいく関係線に、目眩がした。仕事とプライベートの境界線がなくなり、ずるずると引っ張られていく。
☆☆☆
先輩の歌は超上手で、どのバンドよりも会場を沸かせていた。なんだか知らないけど、オタ芸のできるファンまでついていた。仕事では見たことのない、また違った輝きがあって、ひどく驚き、動揺した。
仕事もプライベートもしっかりと自己実現ができている様子を目の当たりにして、僕はへこんだ。すごーく、へこんだ。僕自身、生きてくる中で積み上げてきたものがあるはずなのだけど、時折圧倒的な人間のパフォーマンスを見てしまうと、自分がひどく器のい小さい人間に思えてしまって、激しく落ち込んでしまう。特にそれが、身近なところにいる人であると余計にね。
☆☆☆
1日は皆等しく24時間であるから、先輩は音楽で自己実現をするべく、たくさんの時間を費やしてきたのだろう。そして僕はそうではない。先輩はたくさんの人と長い時間をかけて交流し、人を集め、ライブを成功させている。そして僕はそうではない。だから、こんな気持ちになる必要なんてない。そう思っても、何だか悔しい気持ちが抑えられないのは、たぶん僕に全能感があるからだろう。「自分にもああなれる可能性がある」と思ってしまうからだ。
この気持ちを捨てて、今やるべきことをしている、時間を割いていることに誇りを持ち、くだらん嫉妬や羨望の気持ちで、あれこれ手を出さないようにしたい...。
ああ、僕は「何者にもなれない自分」を感じてしまって、それが辛いんだな。