めぐりめぐる。

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血の繋がった親族に精神病患者がいると、精神病になる可能性は10倍になる

その1

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その2

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その3 本記事

 

精神科の先生には一泡吹かせてやろう、ぐらいの気持ちで病院への道どりを歩いた。


なにせ僕は罰を受けたのだ。急に精神安定剤を奪われ、睡眠薬を取り上げられ、心の平穏を失っていた。


非常につらい日々だった。

 

あまりに辛かったので病院に電話すると、もちろん先生ではなく受付の人が出た。
僕が嫌いな融通のきかないジジイだった。

 

「薬の離脱症状がつらいんです。先生にもお考えがあってこういうことをしているのは理解できるんですが、耐えられません」
「なんとか診断の時間をつくってもらえませんか」

 

僕は懇願したが、ジジイは軽くため息をつくだけだった。

 

「我慢してもらうしかないですね」

 

延々と苦しんでいろと?と僕が続けると、ジジイはそうだと言った。
そうだじゃないんだよこの野郎、とその時僕は思ったのだった。
こちらも大変心苦しいのですが...ぐらいの一言があってもいいものだ。
僕にはこのジジイに蹴りをいれるくらいの権利はあると思う。やらないけどさ。

 

まあそんなこんなで病院に無事につき、診察の受付をすませ、僕の番号が呼ばれた。
僕は確か37番だったのだけど、36番が呼ばれたあとにドキドキしていたら次に27番が
呼ばれたので危うくずっこけそうになった。少しだけ、僕の心の硬さがそこでほぐれてしまった。

 

そして僕が呼ばれた。

 

怒りや悲しみ、苦しみの感情を持って先生の部屋に入ったのだが、僕のこうした怒りの波長を先生は中和させていった。先生の柔らかい波長が僕の波長に繋がり、優しく包み込み、僕は何も言えなくなってしまった。

 

「どうですか?」

 

と先生は言った。質問は具体的に、と言いたかったけど、素直に答えるしかなかった。
何にも抗えないような気分だった。

 

「眠れてないですね」

 

と僕は冷静になるべく聞こえるように話をした。

 

「感情の高まりはある?」
「感情、特に怒りのコントロールが難しくなることがある。例えば妻とうまくいっていないこととか」
「なるほどね」

 

なるほどね、と先生はもう一回言って、軽く頭を掻いた。

 

「治療を根本的に変える必要があるね、躁鬱の人が飲むような感情の起伏をコントロールする薬を処方するよ。あとは眠れるように眠剤も加えよう」
といつもの調子で先生は言った。とりあえずまた薬の治療が始まると思って僕はほっとした。

 

「今は実家?」

 

「いえ、自分の家ですが、昨日妻が出て行きました」

 

「ああ、そう」

 

ああ、そうなんだよと僕は思った。そしてとりあえずまた時々実家にお世話になる予定であることを先生に伝えると、
僕が一番嫌いな言葉を放った。

 

「君もう28だろ?一人ぐらいでいいじゃない」
「俺もそう思うよ、でも周りが心配するんだ」
「お母さんはどうなの?そのへん」

そういうと、僕の後ろにいた母親が泣き出した。

 

「血の繋がった親族で、2人精神病で死んでいます」

 

僕の知らない事実だった。先生もこれにはひどく驚いたようだった。

 

「精神病になったことがある人が親族にいると、精神病になる可能性は10倍になるんだよ。君の場合、それが2人ってことになるね...」

 

先生は急に優しくなった。

 

「君にはとても複雑なものをたくさん抱えているようだね、とりあえず薬は処方するから落ち着いたら詳しく話をしよう」
とまるで和解するような物言いをし、僕はOKを出した。

 

精神病になる可能性は10倍...。

 

そういった素質が僕にはあるということだった。

 

アスペルガーの傾向があるって言われたり、素質があるって言われたり。

 

随分と今年は自分の知らないところで重要なことが判明するなあと僕は呑気に思った。

 

母親の背中が、僕の付き添いの度に小さく弱っていくのを僕はかすかに感じていた。

どうにもならないが。

 

本当に、人生はどうにもならないことばかりだ。