白洋舎のおばあちゃんとアメリカンエキスプレスとTikTokと
地元でクレジットカードの使えないクリーニング店が多くてイライラしていたところに、最寄りの駅に入っていた白洋舎様が「カードOKやで」とWEBサイトで公開していたのを発見。嬉しくなって電話をかけたらおばあちゃんが出た。
「アメリカンエキスプレス 切れる?」
「うーんカードOKなんで、切れると思いますよ」
僕はこのね、「思いますよ」が大嫌いなんすよ。思いますってなんやねん。自転車で15分かけて走って行って、いざ会計しようと思ったら「NG」で言われたら俺はどうしたらいいの?その場で踊ればいいの?じゃあ帰るって言えばいいの?たくさんのスーツ抱えて?ありえんでしょ。とにかく「思う」はなしでしょって思った。
「確認してもらえます?本社ならわかるでしょ」
「そうですね、わかりました」
心良くおばあちゃんは応じてくれて、5ふん後にまたかけますねと行った後、本当に4分40秒頃にもう一度俺に電話をくれた。
「確認とれました、アメリカンエクスプレス大丈夫です。今からこられますか?」
「10ふんでいくわ」
と僕は行って、すぐに店に向かった。
スーツ2点上下とコートで6000円くらいだった気がする。
「うちは高くてねえ、すみませんねえ」
と彼女は僕に言っているのか、あるいは僕の後ろ側にあった白洋舎の古びたロゴに向かって言ったのかわからないが、ぼそぼそと呟いた。
「カード切れれば、僕はいいんで。素敵だと思うよ。キャッシュレスじゃないと俺はダメだし」
そう言うと、彼女は何も言わずににっこり笑って作業をしてくれた。
受け取り控えをもらった後、領収書をくれそうになったので断ったら驚いた。
「大事なものですよね?」
「インターネット上に全部集約するようにしてるから全く問題ない」
そう言うと、おばあちゃんは打ちのめされていた。
時代に取り残された遊園地みたいな顔だなと僕は思った。
ただ、僕も、時代には遅れて行きつつあると思うよ、と慰めてあげたかった。TikTokなんかやろうと思わんけんね。中学生高校生のグルーブ感にはついていけん。俺は俺なりの持論があり、好きなサービスがあるが、あいつらが起こすムーブメントにはたどり着けん。そういうことよ。
だからまあ、お互い様でしょ。そう思って、僕は店を出た。
おばあちゃんがどんな顔をして僕の背中を見送ったのかは、知らない。
(ライティングタイムアタック : 5分20秒)